朝、車のワイパーに小さな蛾がとまっていました。
ふと思い立って、近くに落ちているブナの枯れ枝を拾い、ワイパーにのせてみました。
うっ!似ている。
このように、自らの姿形を他の動植物に似せることを擬態(ぎたい)といいます。擬態には、大きく分けて、捕食者の目を欺いて身を守るためと、獲物に見つからないようにして近づき捕食するための二通りの目的があります。
これは、ネグロトガリバという蛾で、捕食者である鳥から逃れるため、枯れ枝に擬態しているのでしょう。
ネグロというのは、羽の付け根の部分が黒いという意味です。白い樹皮のはがれ落ちた部分に似せて、いかにも折れた枯れ枝ですよ、という芸の細かさです。
こちらは、夜の明かりにやってきたツマキシャチホコという蛾です。
これまた見事に枯れ枝に擬態しています。ツマキというのは、羽の先端部が黄色いという意味で、こちらも樹皮のはがれた雰囲気がよくでていますね。
ネグロトガリバもツマキシャチホコも決して希少種ではありませんが、見事な擬態のおかげで、見つけることは困難です。
もしも、みなさんが彼らの姿を見たいと思ったら、幼虫の食べる植物(食草)を探してみましょう。ネグロトガリバはオニグルミ、ツマキシャチホコはナラやクヌギです。ちょうど夏休みのころ、そういった木々の周りを観察すると、きっと出会えますよ。
(8月、山形県)