5月初旬、仕事帰りの夜道で、ジーーーという長い連続音が聞こえました。
クビキリギスの鳴き声に違いありません。急いで家に帰り、カメラを持って戻りましょう。
鳴き声は、歩道脇の植え込みから聞こえてきます。
そっと近づいて……、見つけました!
鮮やかな緑の個体です。クビキリギスは、まれに褐色の個体を見ることがありますが、それは幼虫時代に湿度の低い環境で過ごすと褐色になるのだそうです。
3月下旬から4月にかけて、似たようなジーーーという鳴き声を聞くことがありますが、そちらは地中にいるケラの鳴き声で、やや低めの声でジーーー。それに対してクビキリギスは、4月下旬から6月くらいにかけて、地上30㎝から1mくらいの草木の上で、やや高めの声でジーーー、と鳴きます。
鳴く虫といえば秋ですが、クビキリギスの鳴く季節はずいぶんと早めです。
実は、クビキリギスは、7月ごろに卵からかえると、夏から秋にかけて幼虫時代をすごし、秋おそく成虫になるとそのまま越冬し、翌年ジージー鳴いて、6月に産卵、という生活環をもっています。
ふつうのキリギリスやコオロギなどの秋に鳴く虫たちは、卵で冬を越し、成虫では越冬することはできません。
一般に、成虫越冬は卵で越冬するよりもはるかに凍死のリスクが大きいと考えられます。クビキリギスが、リスクを承知で成虫越冬する理由はなぜなのでしょうか。他の虫たちと生活環をずらすメリットが、きっと何かあるのでしょう。
こちらは、キリギリス。
えっまさか、アリとキリギリスの童話を反省して、成虫越冬へと進化したのですか。