車の中にジガバチがやってきました。
ジガバチは有名なファーブル昆虫記にも登場する、代表的な狩バチです。
メスは、じぶんの体長の2倍近いアオムシを襲って針を刺し、神経を麻痺させて動けなくしてしまいます。そして、前もって地面に掘ってある巣穴まで引きずっていき、穴の奥にしまい込んで産卵すると、穴に土で蓋をして去っていきます。やがて、孵化したジガバチの幼虫は、動けないアオムシを食べて成長します。
ずいぶんと昔のことですが、たまたま眼の前を飛んでいたジガバチを追っていて、狩の瞬間を目撃したことがあります。それはそれは見事な早業でした。
その後、同じ狩バチのなかまであるベッコウバチが、巨大なアシダカグモを巣に引きずっていくのを見つけたことがあります。どこへ行くのか後を追ったのですが、私に気づいたベッコウバチはアシダカグモを放棄して飛び去ってしまいました。
仕方なく、そのアシダカグモを拾って家に持ち帰り、観察することにしました。
木の板の上にアシダカグモをのせてみると、全く動く様子がありません。ピンセットで前足に触れると、かすかですが足先が動きました。上顎も触れると動きます。確かに生きているのです。けれどもそれだけです。全身から力が抜けて、アシダカグモの俊敏な動きはもうありません。
このアシダカグモは、その後2か月以上も生きていましたが、体から水分が抜けていくにつれ、かすかな動きもできなくなり、やがて命を終えました。
生きたまま食べられこそしませんでしたが、あわれに思えてなりません。