5月、山にはまだ雪が所々に残っています。
ひらけて日当たりの良いところにタチツボスミレの群落を
見つけました。
しゃがみこんで写真を撮っていると、突然ハチのようなものが
飛び込んできました。
特徴的な毛むくじゃらのからだに長いくちばしが見えます。
これはビロードツリアブにちがいありません。
細かい毛が全身を包んでいるところからビロード、空中静止の
状態で花の蜜を吸う姿が宙に吊られているようなのでツリアブ
と名付けられました。
まさに今、細かく羽を震わせて空中静止しています。
花の蜜を吸っていたのは、ほんの3秒ほどでした。
次の瞬間、ビロードツリアブの姿は視界から消えていました。
タチツボスミレもビロードツリアブも、特別に希少な種類では
ありません。みなさんの近くでも観察できる普通の生き物です。
けれども、かれらは春のほんとうにわずかな時期にしか
出会うことのできない、いとおしい生き物たちなのです。