8月も終わる頃、山でキャンプをしていると明かりに小さなセミが迷い込んできました。
体長は2cm、羽の先までふくめても、3cmあるかどうかという小ささです。チチッチチッあるいはジジッジジッと鳴くので、チッチゼミとよばれる本州では最小のセミです。昼間は小さく目立たないため、森のなかで見つけるのはむずかしく、夜の明かりにたまたまやってきた個体を過去に幾度か見るていどでした。セミは昼間に活動する昆虫なので、夜の明かりに来ることは、ほんとうに偶然でまれなことなのです。
横から見ると…
何やら背中の後ろに黒い突起がみえます。
実はこの突起、背中にはえているのではありません。
こちらから見てみるとわかります。黒い突起は後羽についている模様でした。
チッチゼミの後羽は、前羽より高く背中にせり出してたたまれています。これによって後羽の模様が、あたかも背中の突起のように見えるのです。ふつうのセミの後羽は前羽の下にかくれてたたまれています。このことから考えると、チッチゼミはあえて後羽の模様を見せるようにしているのではないでしょうか。
このセミが木にとまっているとき、この模様があると、横からのシルエットがでこぼこして木の一部のように見えます。もしかしたら、この模様は、鳥などの外敵の眼をそらすためにあるのかもしれません。
とはいえ、これはあくまでも私の推測です。ほんとうにそうなのかは、チッチゼミを大量に捕らえ、後羽の模様を消したグループとそのままのグループに分けて、外敵からの生存数を比較しないとなりません。これはとても難しい実験です。証明は不可能に近いでしょう。
生物の世界は謎だらけです。ここはぜひ、チッチゼミ君に真相を語っていただきたいものです。