秋篠理数・算数教室の「さあさあ、お勉強だよ!」


テン

8月の中旬、午後3時くらいでした。人気のない山道を車で走っていると、遠くに動物の歩く姿が見えました。

テンです。

テンは、夜行性の動物で、昼間に活動する姿を見ることは、滅多にありません。

気づかれないように、できるだけ離れて車を停め、車の中から観察することにしました。

カメラをズームして見ると…

さかんに、匂いを嗅ぎまわっています。どうやら獲物の匂いを追っているように見えます。

しかし、その匂いが途切れてしまったのでしょうか、テンは顔を上げてあたりを見回し、私は見つけられてしまいました。

異変を察知したテンは、素早くダッシュ! 草むらに姿を消しました。

 

数年前のことです。夜、山奥の渓谷にかかる橋の上で、動物が通る様子を観察していました。そこは、行き止まりの林道なので、夜は全く人通りがありません。そんな橋は、夜になると動物たちの通り道になるのです。

夜9時、明かりを消し、息をひそめて待っていると、最初に来たのはノウサギでした。ノウサギは橋を渡ってこちらに来ると、橋のたもとに座っていた私の足を踏んで、そのまま去って行きました。それにしても、足を踏むとは…

次にやって来たのはタヌキでした。タヌキは橋を渡って来ると、私から5mくらい離れた所で私に気付き、クルリと向きを変えると、特に急ぐでもなく、落ち着いたようすで、もと来た道を帰って行きました。

そして11時を回ったころ、テンがやって来ました。しかし、テンはすでに私に気付いたようです。橋を渡ろうとせず、20mほど先の林道からじっとこちらを見ています。やがて、テンは渡るのをあきらめ、帰って行きました。「御冗談を」テンは、私にそう言ったのです。私は感動いたしました。

テンは、極めて用心深い動物なのです。

 

(8月、山形県)

 

 

☆☆