呼び名も姿も、とてもよく似た花のハルジオンとヒメジョオン。
これは、どちら?
答えは、ハルジオンでした。
生物の種類を見分けることを、種の同定といいます。今回は、ハルジオンとヒメジョオンの見分け方をみていきましょう。
さて、上の写真をみると、花びらが糸のように細いですね。じつは、このことだけで、これはハルジオンだとわかってしまいます。良くお勉強しているみなさんは、「つぼみが下を向く方がハルジオン」とおぼえているかもしれません。そうするとこの写真のつぼみはどれも上を向いているのでヒメジョオンなのでは?と迷ってしまうのも無理はありません。けれども、ハルジオンの「花びらが糸状」にはまず例外はありませんが、必ずしも「つぼみが下向き」とはならないのです。この辺が、種の同定の難しいところでしょう。
もっとも特徴的でわかりやすい、花びらの太さを比べてみましょう。
左がハルジオン、右がヒメジョオンです。ハルジオンは花びらの幅が1mm以下で糸のように細いのですが、ヒメジョオンは1mmを超える幅で糸状にはみえません。
また、左のハルジオンのつぼみは一つだけ下を向いていますが、ほかはみな上を向いています。では「つぼみが下向き」はあてにならないのでしょうか。
いえいえ、見てください。みごとに「つぼみが下向き」になっていますね。「つぼみが下向き」というのはこういう状態をさして言っているのです。つまり一番初めの写真は開花した花だけをクローズアップしてしまったので、下向きのつぼみたちが写っていなかったというわけです。
実際にフィールドに出て観察するときは、もちろんひとつの花の先だけを見ているわけではなく、植物全体さらには周辺の環境まで見て判断することになるので、「つぼみが下向き」という知識はやはり大切な同定基準ということになるのです。
特に、ハルジオンやヒメジョオンは、北アメリカ原産の外来生物で、ことのほか繁殖力が大きく、一本だけ生えているなどということはまずありません。このように草原一面ハルジオンだらけというのもめずらしいことではないのです。
フィールドでは、できるだけ多くの個体を見るようにしてください。そうすることで、その生物の特徴が浮かび上がってくるのです。
ここで、ハルジオンとヒメジョオンを比較してまとめておきましょう。
……………ハルジオン(春紫苑) ヒメジョオン(姫女苑)…………
花びら 糸状 1mm以下 1mm以上の幅
つぼみ 下向き
花期 春から夏 夏から秋
葉 茎を巻くように付く
茎 中空 白く詰まっている
茎の断面も同定のおおきな根拠になります。
左のハルジオンは中空ですが、右のヒメジョオンは白く詰まっていますね。
さあ、みなさんも外へ出て観察してみましょう。本や映像で得られる知識は、あくまで基本です。外に出て実物に触れてみて、はじめてその知識のほんとうの意味を理解できることも多いのです。
最後におまけ。
山地では、まれに花が赤紫色になることがあります。さて、これはハルジオンですか、それともヒメジョオンですか?
もう、お判りですね。糸状の花びらで、つぼみも下向きですよ。